抄録
ニシローランドゴリラはヒガシゴリラと比較して季節的に,かなり多くの果実を食べることが知られている。果実は草本と比較して,パッチ状に分散しており,一日の遊動距離は主に草本を採食する山地林のヒガシゴリラと比較して長くなると考えられる。実際,ニシローランドゴリラの一日の平均遊動距離は他の亜種よりも長いことがこれまでの研究で分かっている。またニシローランドゴリラにおいては果実をよく食べる時期には,そうでない時期と比較して遊動距離は長くなり,遊動域も広がる傾向がみられる。これまでのムカラバでの研究で,ムカラバのゴリラも他の地域のゴリラと同様に果実の多い時期にはその食性の五割程度を果実に依存している。本研究では1:ムカラバのゴリラの日遊動距離は果実消費量と相関するのかしないのか。2:季節によって遊動域の利用の仕方がどのように変化するかの2点について考察する。
月ごとの各カテゴリの糞中割合の変動をみてみると,果実と葉は月により大きく変動し,繊維は比較的,変動の幅が少ないことが分かった。次にゴリラの一日あたりの遊動距離を調べた。月ごとに遊動距離の平均をとり,糞中の月間平均果実割合と比較すると正の相関を示した。このことは果実食に移行するとともにゴリラの遊動距離が伸びることを示唆している。遊動面積の月平均と糞中の月間平均果実割合を比較するとこれにも正の相関が見られた。このことから,やはり果実消費量が増えるとゴリラが利用する土地の広さも広がることが判明した。遊動域の利用の仕方について,果実食傾向が強い期間と弱い期間の間で大きな差が見られた。果実食傾向が強い時期には広い面積を利用しながらも,ある特定の地域を頻繁に利用し,結果としてcore areaが小さくなる傾向を示した。逆に葉食の傾向が強い時期においては狭い面積を満遍なく利用し,その結果として比較的広いcore areaを持つ傾向がみられた。