霊長類研究 Supplement
第27回日本霊長類学会大会
セッションID: P-52
会議情報
ポスター発表
腎臓に多数の嚢胞が認められた慢性腎不全のアカゲザルの1例について
*渡邉 朗野兼子 明久宮部 貴子西脇 弘樹鈴木 樹理磯和 弘一
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
<目的>
 サル類における慢性腎不全の報告は少ない。今回高齢のアカゲザルで腎臓に多数の嚢胞が認められる慢性腎不全の症例の治療及び病理学的な検討を行ったので報告する。
<方法>
 2010年6月にCT撮像ののち安楽殺し、病理マクロ解剖および病理組織学的検査をおこなった。
<結果>
 経過:2007年9月放飼場にて削痩・衰弱のため入院。初診時、年齢23歳、メス。BUN>140mg/dl、クレアチニン8.1mg/dl、IP>15mg/dlで腎不全と診断。
 治療:皮下補液およびビタミンB12、球形吸着炭細粒など経口投与の治療により一般状態は改善し、維持していた。
 CT撮像および病理学的検討:CT撮像により左右の腎臓に多数の嚢胞が認められた。病理マクロ解剖で左腎の委縮と、左右腎臓に多数の嚢胞をみとめ、実質はほとんど認められなかった。病理組織学的検査により腎臓皮質、皮髄境界部及び乳頭部に種々のサイズの嚢胞形成が両側性・多発性に認められ、残存する尿細管やボーマン嚢には拡張が、間質には線維化が認められた。
<考察>
 ヒトの嚢胞性腎疾患には、主なものとして、1。単純性腎嚢胞、2。多嚢胞化萎縮腎、3。多発性嚢胞腎がある。
 単純性腎嚢胞は、加齢性変化で、臨床症状はほとんどなく、CTスキャン、あるいは超音波検査で調べると50歳代で約20%、60、70歳代になると、 約50%の人にみられるようになる。また女性より男性に多くみられる。単純性腎嚢胞では嚢胞が1個または2~3個できるのが一般的である。マカクサル類でも時々みられる。
 多嚢胞化萎縮腎は、血液透析を受けている透析患者の半分程度にみられる。透析を長く続けていると、腎臓が委縮し後天性の嚢胞ができる。多嚢胞化萎縮腎では、腎細胞癌が高頻度に発症することが知られているが、今回の症例では認められなかった。
 多発性嚢胞腎は、常染色体優性遺伝をとり、非常によくみられる。人種、性別、地域に関係なく600人から1000人に1人ぐらいの頻度で遺伝する。腎臓は正常の約10~ 30倍の大きさになり、約半数の人で腎機能が低下する。 
 今回の症例は左腎の委縮が認められ、右腎の腫大はなく、多数の嚢胞が認められたため、慢性腎不全の結果、後天性に嚢胞が形成された多嚢胞化委縮腎と考えられる。今後、遺伝性多発性嚢胞腎の可能性も考慮し、この個体の子、孫の腎臓関連血液検査やエコー検査を検討している。
著者関連情報
© 2011 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top