抄録
コロンビア国、マカレナ地区、ティニグア自然公園で、ウーリーモンキー(Lagothrix lagothricha)の1亜種(L. l. lugens)の1つの群れを1987~2002年、個体識別し、継続調査してきた。ここではそれによって得られた資料に基ずき、群れ構成の変化、個体の成長に関する変数(性成熟、群れ離脱、出産間隔、死亡率、寿命等)、および両者の関係を示す。このような研究は類人猿や旧世界ザルの多くの種で行われてきたが、新世界ザルではまだごく少ない。IUCNのレッドリストによれば、lugensは絶滅寸前(CR)とされ、自然状態での正確な個体群動態を明らかにすることは大変重要である。
【結果】群れサイズは1987年には12であったが2002年は30であった。これは出産と移入(33と18)が死亡と離脱(19と13)を大きく上回ったからである。移籍はメスだけ(父系社会)なので、移入が増すと出産も増した。出産率は平均出産間隔に対応して3年サイクルで変動した。死亡率は6頭が感染症で亡くなった時期を除き、どの年も10%以下であった。最高寿命は30歳を越えたが生残率は20歳を越すと急激に低下した。
【考察】ウーリーモンキーは遅く成長し、長生きするが、これはこの種が属するクモザル科(Atelidae)全体に共通する特徴である。他の報告を参照するとウーリーモンキーの群れサイズは40を越すものも若干あるが、多くは20~30である。エクアドル領アマゾンに生息する別亜種(L. l. poeppigii)ではメスだけでなくオスも移籍する、との報告がある。これが事実なら、lugensとpoeppigiiのちがいは亜種でなく、種のちがいに相当するかも知れない。