霊長類研究 Supplement
第27回日本霊長類学会大会
セッションID: A-16
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口頭発表
ボルネオ島ダナムバレー森林保護区において5年間に観察されたオランウータンのオトナ雄の移出入
*久世 濃子金森 朝子山崎彩夏BERNARD HenryMALIM Peter T.幸島 司郎
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抄録
 オランウータンの社会構造は、アフリカ大型類人猿と比べると、断片的な情報が報告されているのみで、全体像はよくわかっていない。特に雄については、複数の雌の行動域をカバーするような大きな行動域をもち、同じ場所に長く留まる(以下「定住」)優位雄(フランジ雄)がいる一方で、優位雄の行動域内に定住する劣位雄(アンフランジ雄)、定住せずに放浪する(調査地内を通り過ぎていく)雄、などのタイプがあることが報告されている。本研究では、5年間の調査で観察された雄の移出入を報告し、移出入が起きる要因について考察する。
 ボルネオ島マレーシア領サバ州のダナムバレー森林保護区内のDanum川(川幅30m)の両岸2km2の一次林を調査地とし、2005年3月から2010年12月まで、毎月平均15日間、オランウータンを探索及び追跡した。オランウータンを発見した場合は、1日1個体を観察対象とし、夕方ネストを作るまでの終日追跡を行った。追跡個体は、性・年齢クラス(アカンボウ、コドモ、ワカモノ、オトナ)・顔の特徴及びその他の身体的特徴(ケガの跡など)をもとに個体識別し、名前をつけた。追跡中は毎日、できる限り写真やビデオを撮影し、調査助手と研究者で個体識別の再確認を行った。
 5年間で識別した個体数は、雌16頭(アカンボウ1頭、コドモ4頭、ワカモノ2頭、オトナ9頭)、雄26頭(アカンボウ8頭、コドモ1頭、ワカモノ2頭、アンフランジ8頭、フランジ7頭)、合計42頭だった。このうち、2005年から2010年まで連続して観察された個体は、雌6頭(コドモ0頭、ワカモノ2頭、オトナ4頭)、雄6頭(コドモ3頭、ワカモノ0頭、アンフランジ2頭、フランジ1頭)、合計12頭だった。
 他の調査地からの今までの報告と比べると、本調査地では、短期間(1~2年)でフランジ雄が次々と入れ替わっている点が特徴的である。調査期間中、唯一、5年間継続して観察されていた1頭も2010年後半には消失した。2005~2008年の間は、オトナ雌は全て授乳中で発情せず、交尾も観察されなかったので、雌の発情がこれらの雄の入れ替わりの直接の要因になっている可能性は低い。発表では、果実生産量の変動や最近行ったDNA分析の結果とあわせて、雄の移出入が起こる要因について考察する。
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© 2011 日本霊長類学会
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