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第27回日本霊長類学会大会
セッションID: P-2

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http://doi.org/10.14907/primate.27.0.54.0

ポスター発表
  • 抄録

目的:ゴリラは、野生生息数、国内飼育個体数ともに減少しており、早急な保護対策が求められている。性格の種差や個体差の大きい類人猿では、飼育環境などを個性に対応するように改善することが必要となるが、根拠となるような遺伝的背景がわかれば、より適切に対応できると考えられる。私たちは、ニシローランドゴリラの国内飼育14個体と野生由来(ムカラバ、ガボン)15個体、および野生マウンテンゴリラ(ブウンディ、ウガンダ)10個体で、ヒトの性格、特に攻撃性に関与すると報告されている神経伝達およびホルモン伝達関連の遺伝子の多様性を解析した。
方法:糞または口内細胞からDNAを抽出し、5遺伝子(バソプレシン受容体、モノアミンオキシダーゼA、モノアミンオキシダーゼB、セロトニントランスポーター、アンドロゲン受容体)8領域の多様性を比較した。野生由来の試料は、視認で個体識別されたものか、識別できない場合にはマイクロサテライト型により別個体と判定できたものを用いた。
結果:ニシローランドゴリラでは8領域すべてで多型が見られた(平均対立遺伝子数3.8、平均へテロ接合率0.517)のに対し、マウンテンゴリラは3領域(バソプレシン受容体、モノアミンオキシダーゼB、アンドロゲン受容体)でのみ多型が見られ、多様性が低い(平均対立遺伝子数1.5、平均へテロ接合率0.069)ことが示唆された。バソプレシン受容体、モノアミンオキシダーゼB、セロトニントランスポーターのイントロン領域では、種間で対立遺伝子頻度が大きく異なっていた。
考察:今回解析した遺伝子は、ニシローランドゴリラでは個体差が大きいことから、性格との関連解析のマーカーとして有効であると考えられる。対立遺伝子頻度の種差は、行動や社会の種差にもとづいて解釈できるかもしれない。たとえばヒトで不安の感じやすさと関連するとの報告があるセロトニントランスポーター遺伝子では、マウンテンゴリラはニシローランドゴリラに比べて、不安を感じにくい型を持っていた。マウンテンゴリラの環境が、捕食者が少なく、比較的見晴らしの良い単純な景観をしていることによるものかもしれない。今後は個体数、候補遺伝子数を増やして、性格のマーカーとなる遺伝子を探索する予定である。

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