霊長類研究 Supplement
第27回日本霊長類学会大会
セッションID: P-13
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ポスター発表
マダガスカル熱帯林における植物-霊長類間の強い散実共生関係
*佐藤 宏樹
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抄録
【目的】散実(種子散布)共生系は、1種の植物に対し多種の動物が関わる拡散的な共生系である。しかし、種子が大きな植物では大型動物に散布者が限定され、特定種に対する依存度が高くなる。動物側もそうした植物に資源(果肉)を多く依存する場合、2種間の共生関係は強いといえる。特に霊長類は、多くの生態系で大型果実食者となるため、大型種子植物と強い共生関係を結ぶ可能性がある。大型鳥類・哺乳類分類群の多くが欠如しているマダガスカルでは、キツネザル科が最大の果実食者となるが、強い共生関係を特定した例はごくわずかである。マダガスカル北西部では、種子直径10 mm以上の大型種子植物にとってチャイロキツネザルが唯一の散布者となることがわかっている。本発表では、チャイロキツネザルによる各果実種の採食時間、種子サイズ、糞中種子の個数、発芽能力などのデータから強い散実共生関係を結ぶ植物種を探っていく。
【方法】1つの群に対し2006年12月から1年間の終日観察を行った(1212時間)。観察中に糞を回収し、中に含まれる種子の種、個数、サイズを記録した。採取した種子は、発芽実験を行い、発芽数と発芽日数を記録した。
【結果と考察】全採食時間(186時間)のうち果実食が68%を占め、80種の果実が採食された。最も採食時間が多かった資源はVitex beraviensisの果実だった(21%)。1126個の糞中に、70種12,519個の種子が含まれた。大型種子植物は23種確認された。種子は小さいほど1つの糞中に多く含まれる傾向にあった。そのため最も種子数が多かったのは小型種子のGrewia triflora(27%)だが、同種子を含む糞数は少なかった(6%)。糞中種子の場所や資源を巡る競争を考慮すると、種子数より種子を含む糞数の方が定着実生数を表す指標となる。最も多くの糞に含まれたのは大型種子のV. beraviensisだった(糞数24%)。各種の発芽率を考慮しても、発芽種子を含む糞数が最も多い種はV. beraviensisとなり(発芽率33%)、最も多くの地点に実生を定着させる植物といえる。本種の糞中種子の発芽率や発芽速度は、未採食種子より改善されており、質的にもチャイロキツネザルの種子散布は有効といえる。V. beraviensisとチャイロキツネザルは互いに利益を得ており、強い共生関係を結んでいると示唆される。
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© 2011 日本霊長類学会
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