霊長類研究 Supplement
第27回日本霊長類学会大会
セッションID: P-14
会議情報
ポスター発表
ウガンダ・カリンズ森林におけるロエストモンキー(Cercopithecus lhoesti)の群れの融合と群れ間関係
*田代 靖子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
 ロエストモンキー(Cercopithecus lhoesti)はアフリカ中部の低地林から山地林に生息するグエノンの仲間で、この仲間では珍しく地上性が高い種である。分布域が限られていることもあり、これまでにいくつかの生態学的研究がなされているだけであり、行動や社会性に関する研究はおこなわれていない。
 今回、ウガンダ共和国カリンズ森林において、ロエストモンキーの群れの融合事例を観察したので、前後の状況や同種の群れ間関係と合わせて報告する。
 調査地はウガンダ共和国南西部に位置するカリンズ森林保護区で、中高度の常緑湿潤林に分類されている。6種の昼行性霊長類のうち3種はCercopithecus属のサルである(C. ascanius, C. lhoesti, C. mitis)。いずれの種も単雄複雌群で、群れ間の関係は敵対的である。
 調査期間は2009年9-10月、2010年10-11月のそれぞれおよそ2ヶ月間である。2009年の調査開始時、対象群(LF群)は6頭の非常に小さい群れだった。周辺には少なくとも3群が隣接して遊動しており、遊動域は互いにオーバーラップしていた。
 2009年の調査期間中、LF群と隣接群のLK群(9頭)は時々出会い、オスがディスプレイをしあっていた。10月後半、オス間のケンカとLK群のオトナオスの消失に続いて群れの融合が起こった。当初はLF個体とLK個体の間には接触をともなう激しいケンカが見られたが、2010年の調査時には完全に融合し、融合前にLF群が利用していた地域を中心に遊動するようになっていた。
 今回の観察では、オトナオスが核となって2群の融合が起こったと考えられる。融合した2群はいずれも非常に群れサイズが小さかったため、融合することが、周辺他群との敵対的交渉の際に有利にはたらく可能性がある。また、オスの不在という状況を、新しいオスの群れへの移入ではなく他群との融合という手段で解決したという珍しいケースだったのではないかと考えられる。
 グエノンの仲間の採食生態を比較した研究では、種間、群れ間、調査地間などで非常に変異が大きいことが指摘されている。社会の面においても、単雄複雌という基本構造は多くのグエノンで共通しているが、群れ個体数や、群れ間関係、群れ内個体間関係などに、様々な変異があるのではないかと考えられる。
著者関連情報
© 2011 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top