日本臨床外科学会雑誌
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術中ICG蛍光法で残胃血流を確認した幽門側胃切除術後膵尾部癌の1例
松木 裕輝森 隆太郎松山 隆生熊本 宜文武田 和永遠藤 格
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2016 年 77 巻 9 号 p. 2287-2293

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抄録

症例は88歳の男性.間欠的な上腹部痛を主訴に前医を受診した.腹部超音波および造影CT検査で膵尾部に35mm大の腫瘤を指摘され,精査加療目的に当院を紹介受診した.EUS-FNAを行い,class Vであったため膵尾部癌と診断した.膵体尾部切除術(以下,DP)の方針としたが,胃癌に対する幽門側胃切除術+D2郭清(以下,DG)後であり,脾動脈切離に伴う残胃の虚血が危惧された.術中脾動脈遮断後にindocyanie green(以下,ICG)蛍光静注法を用いて残胃の血流が保たれていることを確認し,残胃を温存して手術を終了した.術後9日目から食事を開始し,以後,合併症なく経過し術後16日目に退院した.胃癌に対するDG後には残胃への血流は脾動脈とその分枝からのみとなり,DPを施行した場合,残胃に虚血性合併症のリスクを伴うと言われる.本症例はICG蛍光法を用いた血流評価により安全に残胃を温存することができた.

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