霊長類研究 Supplement
第27回日本霊長類学会大会
セッションID: P-16
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ポスター発表
野生ミューラーテナガザルの行動と歌―100日間の観察―
*井上 陽一SINUN Waidi吉田 重人岡ノ谷 一夫
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抄録
 野生テナガザルの歌と行動の関係を明らかにすることを目的に、2001年8月から2009年8月までの雨季(12月)と乾季(8月)の各1週間、ボルネオ島北部・マレーシアサバ州ダナムバレー保護区(北緯5°12′)のある野生ミューラーテナガザル(Hylobates muelleri)の家族を延べ100日間追跡し、行動と音声を記録した。その結果、一日当たりの移動距離、活動時間や遊びの頻度を比較すると雨季に比べ乾季の方が有意に高かった。一方で、歌の長さや頻度、フレーズの長さや間隔および音要素の配列には季節差がなかった。雨季の活動が低調な理由は以下のように考えられる。ボルネオの熱帯雨林では一般的に乾季に果実が多く雨季には少ない。そのため、雨季には栄養を豊富に取ることができない。さらに、雨は体温を奪い体力を消耗させる。エネルギーを節約するため雨季には活動を抑制していると考えられる。また、赤道直下に近い北緯5°付近でも12月の日長時間は8月より30分程度短いので、光周性が行動に影響を与えている可能性もある。一方、テナガザルの歌に季節差はなく歌は自然条件には左右されないと考えられる。歌の長さや頻度は家族構成の変化や隣の家族との関係などの社会的な要因に影響されている可能性がある。また、音要素の配列は、夜明け前の歌、夜明け後の歌、隣の群れと鳴き交わした歌、家族内で鳴き交わした歌や縄張り内で音声プレイバックした時反応した歌など、その時の状況によって異なっていた。
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© 2011 日本霊長類学会
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