霊長類研究 Supplement
第27回日本霊長類学会大会
セッションID: P-17
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ポスター発表
ボルネオ島ダナムバレー森林保護区における果実生産量とオランウータンの個体群密度 -3回の一斉結実を含む5年間の季節変化-
*金森 朝子山崎 彩夏久世 濃子半谷 吾郎BERNARD HenryMALIM Peter T.WONG Siew Te幸島 司郎
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抄録
 オランウータンが棲息する東南アジアの熱帯雨林では、2-10年に1度、多くの樹種が一斉に開花・結実する「一斉結実」と呼ばれる現象がおき、果実生産量が大きく変動する。したがって、果実食性の強いオランウータンがこの果実生産量の大きな変化にどう対処しているかを理解することは彼らの生態理解や保全に重要であるが、まだ情報は少ない。
 そこで本研究では、オランウータンの中でも最も果実生産量の変動の大きな地域に生息する亜種(Pongo pygmaeus morio)を対象に、オランウータンの個体群密度と果実生産量の関係を分析することを目的に調査を行った。調査では、ボルネオ島サバ州・ダナムバレー森林保護区内にある観光用宿泊施設(Borneo Rainforest Lodge、以下BRL)周辺の調査地内に、総延長10kmの調査トレイルを設け、3回の一斉結実期(2005年、2007年、2010年の毎6-9月)を含む5年間(2005年3月-2010年12月)、ネスト(巣)センサスと落下果実センサスを行なった。
 本調査地では毎月のネスト(巣)のサンプル数が少ないため、「毎月新たに発見されたネスト数」を個体群密度の指標とした。オランウータンのネスト数は、月平均N=16.7であったが、2005年の一斉結実時では最大N=73、2007年の一斉結実時ではN=35、2010年の一斉結実期ではN=35に増加した。ネスト数と落下果実量との有意な相関関係は見られなかったが、3度の一斉結実期の果実量ピークはネスト数のピークとおおよそ一致した。
 本調査地から約11km離れたDanum Valley Field Centre(以下DVFC)で記録された2005年-2008年の果実生産量を、本調査地(BRL)の果実生産量と比較した結果、BRLで果実生産量が著しく増加し最もネスト数が多かった2005年の一斉結実期には、DVFCでは著しい果実生産量の増加は見られなかったのに対して、BRLのネスト数が2005年の約半数だった2007年の一斉結実期(N=35)には、BRLとDVFCの双方で果実生産量が増加していたことがわかった。
 これらの結果から、果実生産量にはかなりの局地的なばらつきがあり、オランウータンは果実量の少ない地域から多い地域へ、果実を求めて流入および流出したことが示唆された。このような移動は、果実量変動の大きい東南アジアの熱帯雨林で生きるために必要な行動であると考えられる。
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© 2011 日本霊長類学会
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