霊長類研究 Supplement
第27回日本霊長類学会大会
セッションID: A-04
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口頭発表
ニシゴリラはどのように群を維持しているのか
*岩田 有史
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抄録
 低地熱帯雨林に生息するニシゴリラ(Gorilla gorilla)は山地林に生息するヒガシゴリラ(Gorilla beringei)と異なり、季節的に多量の果実を採食することが知られている。しかし、その食性の相違にも関わらず、ニシゴリラの社会構造はヒガシゴリラのそれと変わらず、一頭のシルバーバック(オトナオス)と複数のオトナメス並びにそのこどもとから成り立っている。また、グループサイズにおいても、ヒガシゴリラとニシゴリラの間で差はない。ゴリラの体サイズの性/年齢間での相違は非常に大きく、シルバーバックはオトナメスと比較して、その体サイズはほぼ倍である。同種の間でも、体サイズによって栄養要求が異なると考えられるが、常に群れのまとまりを維持しつつ遊動する中で、各個体はどのように栄養要求を満たしているのであろうか。
 調査地はガボン共和国ニャンガ州ムカラバ国立公園。調査機関は2006年8月から2008年5月までの22ヶ月である。採食品目の決定ならびに各品目の採食量に関しては、糞分析と遊動ルート上の食痕によって調査した。その他の行動に関しては直接観察により記録した。
 オトナの個体に比べてコドモの個体は糞中の果実割合が有意に高く、葉の割合は有意に低かった。シルバーバックとオトナメスの間には果実、葉、THVの糞中割合には有意な差が検出されなかったが、樹上で採食されることが多い果実に関してはオトナメスでの糞中で有意にシルバーバックより高かった。ムカラバのゴリラは体サイズごとに食物を食べ分け、競合のレベルを下げることで、ヒガシゴリラと同様な単雄複雌群を維持していることが示唆された。また、同時に同じ樹上で採食する個体数が少ないほど、採食継続時間は短かった。さらに、年長のコドモ個体は親と一緒に行動せず、コドモ同士で一緒に行動する傾向が見られた。このことは、少ない個体数で行動する際、群れからはぐれてしまわないようにする行動であると考えられる。以上のことから、ムカラバのニシゴリラは採食品目、並びに採食行動を体サイズや同時に採食する個体数に応じて変化させることで、ヒガシゴリラと同様の社会構造並びグループサイズを維持していると考えられる。
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© 2011 日本霊長類学会
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