霊長類研究 Supplement
第28回日本霊長類学会大会
セッションID: P-46
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ポスター発表
GPSで記録した個体追跡位置情報に基づくヤクシマザルの活動別行動圏および移動距離
*スプレイグ D. S.西川 真理
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抄録
 GPS装置を野外調査中に携帯することが常識となった近年、GPSから得られる位置情報をどのように研究に活用するかが新たな課題となりつつある。本研究では屋久島のニホンザル(Macaca fuscata yakui)を対象に行った個体追跡観察中GPSで記録した位置情報を使用し、同時点で観察した行動と位置を結合したデータに基づき、(1)活動別にカーネル法による行動圏を推定し、(2)観察個体の停止地点を連結する方法で一日の移動ルートを構築し、地図化した。更に(3)そのルート内にある主要な行動地点の間に派生する移動セグメントを割り出し、その始点と終点における採食とグルーミングの組み合わせによって移動距離に違いがあるかを調べた。オトナメス6頭を対象とする35日分の終日個体追跡データを解析した。観察個体は停止地点において採食とグルーミングを両方することが稀なため、観察個体が採食、グルーミング、移動、それぞれの活動を示す地点は必ずしも近似しないが、グルーミング場所は採食場所との一致率が高かった。移動セグメントの距離は、始点と終点の間で活動が異なる場合に有意に長くなる傾向があった。採食地点とグルーミング地点の間を移動するセグメントの距離が比較的長く、採食地点間の距離は次に長く、グルーミング地点間の移動が最も短かった。これは、グルーミングに好まれるような地点が採食地点と異なるために、活動が変化する場合に移動距離が長くなると解釈できる。採食地点間の移動距離が長い場合も観察されたが、近い樹木の間を連続的に移動する場合も多く観察された。グルーミング地点間の移動は殆どが短距離で、長距離移動を伴うグルーミング地点の移動は稀であった。主要な活動の間に派生する移動セグメントは、サルが個々の資源を確保するために実際に示した移動の単位であり、移動の生態学的意味を解明する手法として有効であると言える。
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© 2012 日本霊長類学会
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