霊長類研究 Supplement
第28回日本霊長類学会大会
セッションID: A-03
会議情報

口頭発表
タンザニア乾燥疎開林地帯のチンパンジーの採食品目とその季節変化
*吉川 翠小川 秀司小金澤 正昭伊谷 原一
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
乾燥疎開林地帯に生息するチンパンジー(Pan troglodytesの採食品目の季節変化を調べた。タンザニア西部のウガラ地域は,チンパンジーの生息地の中で最も乾燥した地域の1つである。同地域の8割以上は樹高が約20mになる落葉樹がまばらに生える乾燥疎開林であり,他には川辺林と草地がパッチ上に存在している。季節は乾季と雨季に分けられる。調査はウガラ地域のングエ地区(05°13.0’S, 30°27.5’E)において,2007年12月から2008年2月,2008年6月から8月,2010年8月から2011年8月に採集した合計306個のチンパンジーの糞を分析した。糞は1mmメッシュのザルで洗い,残差を乾燥後,その中に含まれていた品目(種と部位)を記録した。草本のアフリカ・ショウガ(Aframomum spp)の果実は,1年の内の10ヵ月間,イチジク(Ficus spp)の果実は9ヵ月間採食されていた。この期間は,雨季と乾季の両方の季節にあたる。アフリカ・ショウガの出現頻度が50%以上だった月は6ヶ月あった。これほど長い期間にわたって頻繁に採食されていた食物は他にはなかった。また,出現頻度が80%以上の月のあるGrewia mollis and/or platycladaおよびAzanza garkeanaと,糞中に占める重量の合計が高かったParinari curatelliifolia),およびMultidentia crassaは雨季の終わりから乾季にかけて採食されていた.一方,雨季にはAntidesmavenosumが4ヶ月間採食されていた.季節ごとに出現頻度や重量の高い樹種は見られたが,熱帯雨林に比べて樹木密度が低く,果実の絶対量が少ない乾燥疎開林では、樹上の果実だけではなく、長期間利用が可能である草本性のアフリカ・ショウガの実が重要な食物資源となっていた.
著者関連情報
© 2012 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top