霊長類研究 Supplement
第28回日本霊長類学会大会
セッションID: P-22
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ポスター発表
霊長類の出産-子は母の背中またはお腹のどちらを向いて生まれてくるのか?
*中道 正之
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抄録
 ヒト以外の霊長類の子は母の腹部を向いて生まれてくるので(occiput posterior position)、母は生まれ出てくる子を持って、自身の腹部に引っ張り上げることができる。他方、ヒトの胎児は母の背中を向いて生まれてくるので(occiput anterior position)、母が生まれ出てくる胎児を持って、母の腹部側に引き出すことは困難である。結果的に、文化等の違いに関係なく、ヒトの出産では介助者が存在するという仮説が提出されている(Trevathan 1987)。しかし、Hirata et al.(2011)は、飼育チンパンジーの出産3事例のビデオ映像の撮影に成功し、3事例のすべてにおいて、子は母の背を向いて誕生したことを報告している。飼育ゴリラ(Nadler, 1974)と野生ニホンザル(Nakamichi et al., 1992)でも、それぞれ1事例ではあるが、子が母の背を向いて生まれることがカラー写真付きで報告されている。
 本研究では、Trevathan(1987) らが指摘するように、ヒト以外の霊長類では、子は母の腹部を向いて生まれてくるのが一般的なのかどうか、さらに、出産に関連する行動(陣痛時間、母の音声、母が子を引き出す行動、誕生直後の子への世話行動、胎盤食、子の音声(産声)、他個体の反応など)についても、文献検索、ネット上に公開されている映像などをもとに調べた。誕生時の子の顔の向きを記述した論文は多くはないが、サル類では子は母の腹側を向いて生まれるのが一般的といえる。しかし、大型類人猿では、母の背中を向いて生まれる事例がチンパンジーで4事例、ゴリラで3事例確認できているが、母の腹部を向いて生まれる事例は確認できていない。まだ文献検索等は不十分ではあが、出産に関わる母子の行動から、なぜヒトでのみ出産の介助者が存在するのかについて仮説を提案する。
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© 2012 日本霊長類学会
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