抄録
飼育下の霊長類は、自然環境で暮らしている場合と比べて、一般に採食時間が短い傾向がある。そのため、動物福祉の観点から環境エンリッチメントを用いて採食時間を延長させる必要がある。本研究では、難易度の異なるフィーダーを用いて、採食時間の延長効果を検討した。対象はオレゴン国立霊長類研究センターでケージ飼育されているアカゲザル(Macaca mulatta)8個体とした。対象個体に餌で満たしたフィーダーを与え、フィーダーの利用時間と採食時間を記録した。また、若齢個体(4~6歳齢)と老齢個体(15~22歳齢)におけるフィーダーの利用時間と採食時間の延長効果を比較した。用いたフィーダーは難易度が低く繰り返し呈示された経験のある物と、難易度が高く初めて経験する物とした。難易度の低いフィーダーを用いて給餌した時と比較して、難易度の高いフィーダーを用いて給餌したときはフィーダーの利用時間と採食時間が延長された。また、どちらのフィーダーにおいても若齢個体と比べて老齢個体においてフィーダーの利用時間と採食時間が長かった。難易度が低いフィーダーでは観察期間全体にわたって利用時間と採食時間が一定であったのに対し、難易度が高いフィーダーでは繰り返し呈示するにつれて利用時間と採食時間が短くなっていった。以上の結果から、フィーダーの難易度を高くすることで採食時間の延長が達成された。この延長効果は若齢個体と老齢個体の両方で見られたが、老齢個体において利用時間と採食時間がより長かった。ともに初めて経験するフィーダーにおいて学習による利用時間と採食時間の短縮が見られたが、その短縮効果に加齢による違いは見られなかった。採食時間の延長を達成するためにフィーダーの難易度を高くすることが効果的であることが分かった。また、対象個体の年齢を考慮してフィーダーの難易度を決定する必要があることが示された。