主催: 日本霊長類学会・日本哺乳類学会大会
1997-8年の AG Soumahと横田直人が実地研究で優位・劣位別に記録した食物摂取のデータを元に,2011年の日本霊長類学会大会で高崎山のサルは全体として人工餌と自然餌をほぼ 50%ずつ摂取していることを報告した.今回はこれをさらに進めて消化・消費エネルギーを求め,日常生活に必要なエネルギーをほぼ摂りいれていることを報告する.現在高崎山では 1950-60年代の投餌量の 40%にまで減らしている.消化率の高い人工餌をより多く摂取している優位個体が多くのエネルギーを消費エネルギー (基礎代謝量の 2倍とする)に回していることは当然だが,劣位個体でも,さらに冬でも余剰エネルギーを蓄えていることが分かった.しかし山の上昇下降を繰り返すサルの消費エネルギーをプラス25%とすると,ほぼ過不足ない栄養を摂取していることになる.調査から漏れた春と秋の摂取エネルギーを考慮すると,たぶん十分な栄養を得ている.さらにこの食生活が森林の生産量に対して 6-9%の消費効率で負荷を与えていることを明らかにし,森もサルも生き続けるために個体数を現在の 1300から 800頭に減らして消費効率を4-6%とする計画を立てておりそのための方策を提示する.