霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: E3-6
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口頭発表
ニホンザルのオスは集団からの一時離脱を繰り返し,集団形成コストを補償する
*大谷 洋介, *澤田 晶子, *半谷 吾郎
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抄録
 複雄複雌集団に所属するニホンザル(Macaca fuscata yakui)のオス個体が,平均 68分間の一時的な離脱行動を繰り返していた.非交尾期において,オスは離脱時に採食上の利益を得ており,交尾期には他集団を訪れ交尾に成功していた.特に低順位のオスは一時的な離脱により,集団内での採食・繁殖上の不利を,集団形成の利益を完全には失うことなく補償する戦略を取っていた.
 集団に属する個体は採食競合や遊動に関する不利益と,資源防衛や被食回避といった利益を同時に享受している.集団と共に遊動するかどうかの選択に影響する要因を明らかにすることは集団に属する利益と不利益を解釈し,集団形成の意義を考察する上で重要である.
 屋久島に生息するニホンザルを対象とした.二人の調査者による二個体同時追跡を実施し,個体の位置と行動を記録した.季節を問わず雌雄はしばしば数百 m以上離れ,その場合オスの周囲に他個体がいることは稀であった.非交尾期には離脱したオスは遅い速度で長い時間採食しており,この差は葉よりも限定的な食物である果実において顕著であった.オスは離脱によって集団内採食競合を回避している可能性がある.また交尾期には,離脱頻度と集団内発情メスの頭数の間に相関が見られた.離脱した雄の多くは他集団を訪れ,交尾を試みていた.また被攻撃頻度が高く親和交渉においても不利な低順位のオスほど長時間,頻繁に離脱していた.低順位のオスが,集団内での採食・繁殖上の不利を離脱によって補償している可能性がある.
 集団を離脱する利益としては集団内採食競合,攻撃交渉の回避および交尾機会の拡大が挙げられ,不利益としては集団間競合に対して脆弱になること,親和交渉の喪失,遊動コストの増大が挙げられた.翻って集団に属する不利益は集団内採食競合と攻撃交渉であり,利益は同種他群からの資源防衛と集団内親和交渉であると考えられる.
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© 2013 日本霊長類学会
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