霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: P-39
会議情報

ポスター発表
岩手県盛岡市高松公園に生息するニホンリスの巣の位置と行動圏との関係
*菊池 晏那*出口 善隆*西 千秋*原科 幸爾
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

 ニホンリス (Sciurus lis, 以下リス )は行動圏内に持つ複数の巣を時々変える.巣は休息場所やねぐらとして重要な役割を果たすが,その位置や使用状況は知られていない.そこで,本研究では岩手県盛岡市高松公園とその周辺で巣の位置と行動圏との関係を解明することを目的とした.調査は 2012年 6月から 11月まで行い,調査個体は発信器を付けたリス 4頭を用いた.行動圏はラジオトラッキングにより平日に 1日 3点測位した.巣は毎日日没後にホーミング法により特定した.行動圏とコアエリアは,固定カーネル法 (以下 FK)を用い, 90%FKを行動圏, 50%FKをコアエリアとした.行動圏はオス (n=2)では平均 13.9ha(6.6~21.1ha),メス (n=2)では平均 3.7ha(0.7~14.8ha)であった.コアエリアはオスでは平均3.1ha(2.2~4.0ha),メスでは平均 1.1ha(0.2~4.6ha)であった.7月のメス No.2(以下 F2)の巣は全てオスのコアエリアに含まれていた.また,雌雄で同じ巣を異なる日に使用した日もあった.コアエリアと非コアエリアの巣の個数は,2ヶ月以上連続測位できたのが F2のみのため,F2の 7月から 10月までのデータを用いた.F2のコアエリアにある巣ののべ使用日数は 66日で,非コアエリアにある巣ののべ日数は 52日であった.F2のコアエリアと非コアエリアの面積割合から巣の数の期待値を算出し,χ二乗検定を行った結果,有意な偏りがあり(P<0.005),コアエリアには期待値より多く巣があった.全個体のコアエリアと非コアエリアの巣の平均連続使用日数について一元配置分散分析を用いて比較した結果,コアエリアでは平均 3.1日間 (1~22日間),非コアエリアでは平均 3.4日間 (1~11日間 )巣を使用しており,平均連続使用日数に差はなかった.これにより,リスが使用する巣の密度は非コアエリアよりもコアエリアの方が高いが,非コアエリアの巣もコアエリアの巣も1つあたりの平均連続使用日数は同程度であることがわかった.

著者関連情報
© 2013 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top