抄録
近年,洞窟性コウモリが人工洞においても休眠・越冬・繁殖等の利用をすることが確認されてきている.
本調査では,高知県須崎市において,キクガシラコウモリ類が利用する人工洞を複数確認し,それらの利用状況を記録したので報告する.
調査は, 2012年 4月 1日より 2013年 3月 31日にかけて行った.調査を行った人工洞は須崎市内にある戦争遺跡 3ヶ所,収穫した農作物を保存するための穴 19ヶ所(生姜の穴)および石灰採石を行っているトンネル1ヶ所の計 23ヶ所である.
戦争遺跡は,高さ 4m,幅 4m,奥行きはそれぞれ 8m,9m,14mで,内壁は岩が露出している素掘りであった.生姜の穴は,高さ 1.5m,幅 1m,奥行き 5~ 15mで,内壁は土や岩が露出している素掘りであった.穴の構造は入口から直線で掘り進んだだけの単純な場所や,内部で複数の分岐がある場所など,さまざまなタイプがみられた.トンネルは,高さ 4m,幅 5m,奥行きは 200mで,内壁は吹付けのコンクリートで覆われているが,凹凸が多くコウモリが掴まりやすい状態となっていた.なお入口は,通常柵状の金網でふさがれていた.
戦争遺跡では,夏季にキクガシラコウモリの母子集団を確認した.また冬季には 10数頭が冬眠していた.コキクガシラコウモリの利用は年間を通じて確認できなかった.生姜の穴では,キクガシラコウモリとコキクガシラコウモリが確認された.穴によって利用状況は異なり,内部で分岐が多く規模が大きい場所ほど多くの個体が長い期間利用していた.最も規模が大きい場所では約 200頭のコキクガシラコウモリが年間通じて確認されたが,母子集団は確認できなかった.キクガシラコウモリは冬季に全ての生姜の穴で利用個体が確認されなかった.
トンネルでは,キクガシラコウモリの利用は確認できなかった.コキクガシラコウモリは, 1000頭程度の母子集団を確認した.