抄録
近年,洞窟性コウモリにとって人工洞も重要な生活場所であることがわかってきた.筆者らは,平成 15年 4月より高知県におけるコウモリ目の生息状況調査を進めている.調査の過程で,高知県四万十川周辺において,ユビナガコウモリが利用する人工洞を複数確認し,それぞれの場所における利用状況を記録したので報告する.
調査を行った人工洞は昨年度の哺乳類学会大会で報告した 3ヶ所(奈呂,江川崎および用井)に加え,2012年 12月に新たに多くのユビナガコウモリの利用が確認された 1ヶ所(宮地)の,計 4か所である.新たに確認した「宮地」の構造は,高さが約 3m,幅約 2.5m,長さは約 100mで,これまで確認されていた 2ヶ所のボックスカルバートよりも大型であった.内壁は平坦なコンクリート製であるが,老朽化が進み,壁面の多くの場所でコンクリートが剥落し,コウモリが捕まりやすい状況となっていた.他の調査地同様に床面全体を常時水が流れていた.調査は,2012年 9月 1日より 2013年 8月 31日にかけて 1ヶ月に一度行った.調査時には,洞の外気温および内気温,確認した種の判別,種ごとの個体数等を記録した.また,4ヶ所すべての調査洞において捕獲を行い,性の判別,成長段階の把握を行い,標識を装着して放逐した.
調査の結果,「用井」および「江川崎」の利用状況は,春期と秋期に個体数が増加し,夏期と冬期に減少し,育児や冬眠場所としての利用はみられず,ほほ例年どおりであった.「奈呂」は夏期のみに利用し, 2011年および 2012年の両年で育児コロニーが確認されていたが, 2013年は利用が見られなかった.「宮地」では,2012年 12月より 2013年 8月まで 1,000頭を超える集団の利用が確認され,冬眠と育児の両方の活動が確認された.確認された集団の中には,これまで他 3ヶ所で標識を装着した個体が多数確認された.