抄録
野生動物にとって人為的に攪乱された森林は原生的な生息地の代替となるだろうか.長野県秋山地域において,人為的森林利用と中大型哺乳類の分布の関係を明らかにするために,さまざまな森林タイプ(低攪乱落葉広葉樹林・高攪乱落葉広葉樹林・針葉樹人工林・針広混交林など)にセンサーカメラを設置して調査した.4568.6日の調査期間に 740枚と 13種の中大型哺乳類の写真を撮影できた.撮影枚数のうちカモシカとニホンノウサギが優占した(54%).低攪乱落葉広葉樹林でもっとも種多様性が高く(12種),低攪乱林(9種)や人工林(7種)では低かった.果実食哺乳類にとって重要な樹種と植物食哺乳類にとって重要な林床植生が十分であったために多様な哺乳類の生息が可能となり,低攪乱林で種数が高かったと考えられる.一方,高攪乱林や針葉樹人工林では,林床植生が十分見られたのでカモシカやニホンノウサギにとっては好適だったが,果実食哺乳類にとって重要な樹種は少なかったために,高攪乱林や人工林では種数が高くなかったと考えられる.いったん落葉広葉樹林の生息地が人為的に森林改変されても,植物食哺乳類にとっては代替生息地となりうる可能性はあるが,人工林は果実食哺乳類にとって魅力に乏しいので,果実食哺乳類にとっては必ずしも代替とはならないだろう.