霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: P-78
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ポスター発表
炭素・窒素同位体分析による飼育下チンパンジーの食性・授乳習慣復元
*蔦谷 匠*近藤 裕治*山本 光陽*米田 穣
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抄録
 食物の安定炭素・窒素同位体比 (それぞれ δ 13C・ δ 15Nと表記 ) は,C 3植物や陸上哺乳類といった大きなカテゴリーごとに特有の値をとることが知られており,それらの消費者の体組織を同位体分析することで,摂取食物や離乳年齢を定量的に推定できる.近年,特に野生霊長類を対象にした同位体分析の応用研究例が増加しているが,霊長類における同位体の挙動の理解を目的とした基礎的な研究はそれほど多くない.
 本研究は,同位体分析による食生態復元の基礎的な知見を得ることを目的に,名古屋市東山動物園に飼育されているチンパンジー 7個体 ( Pan troglodytes,当時 1歳のアカンボウとその両親を含む ) を対象として,行動観察と同位体分析を同時に行なった.調査期間は 2012年 8-9月の 1ヶ月間である.
 オトナ 6個体の摂取食物を走査サンプリングによって記録し,個々の食物の同位体比を測定し,食品成分表を参考にして,個体ごとに食性の総カロリーや同位体比を計算した.得られた食性の値を,採取し同位体分析した体組織と比較して,毛 (n = 25) は δ 13C・ δ 15Nともに増加,糞 (n = 65) は δ 13C低下・δ 15N増加,尿 (n = 8) はδ 13C変化なし・δ 15Nやや低下,という結果を得た.食物同位体比が体組織に反映される際にはシステマチックな差が生じることがわかっており,本研究で得られたチンパンジーでの食物 -体組織の差は,他の哺乳類で報告された範囲におさまっていた.
 総計 26時間の個体追跡により,東山動物園のアカンボウにおいて,1時間あたり平均 0.6回,1回あたり平均 1.8分の吸乳行動を観察した.母子の毛・糞の同位体比を比較した結果,予想された通りアカンボウのδ 13C・ δ 15Nが増加しており,チンパンジーにおいても,同位体分析によって離乳年齢を推定できる可能性が示された.
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© 2013 日本霊長類学会
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