霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: P-84
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ポスター発表
ヴェトナム・カッティエン国立公園で捕獲されたネズミ科のDNAバーコーディング法を用いた餌資源調査
*白子 智康*石澤 祐介*味岡 ゆい*上野 薫*Tan H Do*Thanh H Bach*Van T Tran*山田 祐彰*南 基泰
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抄録
 ヴェトナム国内最大級の熱帯雨林を保有するカッティエン国立公園において,2011~ 2012年の間,のべ 23日間,国立公園内の 17箇所でネズミ科の生息及び餌資源について調査を行った.捕獲調査の結果, Maxomys surifer(アカスンダトゲネズミ)17個体, Niviventer bukit(マライシロハラネズミ)3個体,Rattus exulans(ナンヨウネズミ)3個体, N. fulvescence(ヒマラヤクリゲネズミ)2個体, Rattussp.(クマネズミ属)8個体の合計 33個体が捕獲された.これら 3属 4種の国立公園内での餌資源を明らかにするために,捕獲個体の胃腸内容物より全 DNAを抽出し,DNAバーコーディング法を用いて植物性(rbcL)及び動物性(COI)食物残渣を BLSAT検索により推定した.解析の結果,植物性被食物では Mallotus repandus(Accession No.GU441787,Euphorbiaceaeトウダイグサ科),Chydenanthus excelsus (Z80180, Lecythidaceaeサガリバナ科), Litsea timoriana(CQ248633, Lauraceaeクスノキ科), Sphagneticola trilobata(GU135265,Compositaeキク科)等が検索された.また,動物由来被食物として Phrynichus orientalis(JN018116, Phrynichidaeオニウデムシ科),Dundubia nagarasingna(GQ527074,Cicadidaeセミ科),Odontotermes hainanensis(GU254092,Termitidaeシロアリ科)等が検索され,DNAバーコーディング法は餌資源推定として有益なツールであることが確認できた.また,捕獲地点の植生データと照合することによって,餌資源となる植物や動物性餌資源に寄与する植生などの推定が可能となり,今後の哺乳類相保全のための熱帯林保全指針として活用できると期待できた.
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© 2013 日本霊長類学会
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