霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: P-103
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ポスター発表
ハンドウイルカにおける闘争後親和行動を行う個体の決定に影響を与える要因
*山本 知里*石橋 敏章*吉田 明彦*天野 雅男
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抄録
 ハンドウイルカは闘争によって悪化した関係を修復するために,闘争後に闘争個体同士または闘争個体と第三者で親和行動を行うことが示唆されている.しかし闘争後の親和行動を行う 2個体が,どのように決まっているかはわかっていない.霊長類では,闘争個体間の関係が親密な場合や,闘争が激しくない場合,勝敗が明確な場合は,闘争個体と第三者間よりも闘争個体間で親和行動が行われる傾向があると考えられている.また闘争個体と第三者間で闘争後親和行動を行う場合,闘争個体と第三者が親密なほど,その個体間で闘争後親和行動を行う傾向があることが示唆されている.ハンドウイルカでもこのような要因が,闘争後親和行動を行う 2個体の決定に影響を与えるか検討した.しものせき水族館の 7頭とかごしま水族館の 5頭のハンドウイルカが行った闘争と親和行動を記録した.1)闘争後親和行動を闘争個体同士で行うか闘争個体と第三者で行うかに,闘争個体間の親密さ,闘争の激しさ,勝敗が明確であるかが影響するか,2)闘争個体と第三者間で行われる闘争後親和行動の発生回数に,その個体間の親密さが影響するかを,水族館ごとに一般化線形混合モデルを用いて検討した.その結果,1)闘争個体同士が親密であるほど,闘争個体と第三者よりも闘争個体同士で闘争後親和行動を行う確率が高くなり,2)闘争個体と第三者間で闘争後親和行動が行われる場合は,闘争個体と第三者が親密であるほど,その個体間の闘争後親和行動の発生回数が多くなる傾向があった.これらの結果から,ハンドウイルカは親密な個体同士で,闘争後の親和行動を行う傾向があることが示唆された.
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© 2013 日本霊長類学会
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