霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: P-104
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ポスター発表
ニホンザルの超高齢メスにおける同年代メスとの社会的関わり
*市川 彩代子*山田 一憲*中道 正之
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抄録
 ニホンザルを含むマカク属を対象とした老化研究では,メスは加齢に伴って近接や毛づくろいなどの社会的関わりの量が減少する社会的孤立化傾向があり(Hauser & Tyrell, 1984),この傾向は低順位メスで見られ高順位メスでは見られないことが明らかになっている(Veenema et al., 1997).出産率が低下する 20歳齢以降を老齢メスと定義することが一般的であるが,嵐山ニホンザル E集団には 25-32歳齢の超高齢メスが 17頭も生存していた.これらの超高齢メスを対象にした筆者の先行研究において,加齢や順位が社会的関わりの量に及ぼす影響を検討したところ,近接や毛づくろいの生起率に関して加齢変化も,順位による差も見られなかった.この原因として,一般的な集団には老齢メスがわずかしかいないが,嵐山 E集団の超高齢メスには同年代の超高齢メスが多かったことが考えられる.そこで,本研究は嵐山 E集団の超高齢メスが同年代メスと関わることが多いのかどうか検討した.
 嵐山 E集団の 25-32歳齢の超高齢メス 17頭を対象に,個体追跡法による 1セッション 20分間の連続観察を行った.観察期間は 2011年 6月から 12月であり,総観察時間は 102時間であった.毛づくろいと近接の開始及び終了時間と,その相手個体を記録した.分析では対象個体の母,娘,孫,姉妹を「血縁メス」,血縁個体ではなく年齢差が 4歳齢以下を「同年代メス」,血縁個体ではなく年齢差が5歳齢以上を「同年代でないメス」とした.
 超高齢メスは血縁メスと多く毛づくろいしていた.一方,血縁メスや同年代でないメスではなく同年代メスと近接することが多かった.以上より,超高齢メスの多い嵐山 E集団では,同年代メスとの社会的関わりが多いため,社会的孤立化傾向が見られなかった可能性が示唆された.つまり,社会的孤立化傾向は加齢によるものだけではなく,幼い頃から親しくしていた同年代メスの死亡により引き起こされるのかもしれない.
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© 2013 日本霊長類学会
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