霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: P-147
会議情報

ポスター発表
山中峠ミズバショウ群生地における電気柵を用いた野生動物による被害の防除と衰退したミズバショウの回復
*小澤 一輝*安藤 正規
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
 近年,岐阜県高山市荘川町の山中峠湿原に群生するミズバショウ(Lysichiton camtschatcense)が野生動物の被害をうけて減少したことが問題となっており,2010年にはこの被害がニホンジカとイノシシの採食によるものであることが確認された.山中峠湿原のミズバショウは県の天然記念物に指定されていることから,2011年には高山市および飛騨森林管理署により湿原の一部に電気柵(以下柵)が設置され,その後 2012年からは湿原の大部分を囲うように柵が拡張された.柵の設置期間は 2010年にミズバショウが食害を受けていた時期を参考に毎年 6月中旬から 11月上旬にかけて設置されている.本研究では,野生動物の採食により数を減らしたミズバショウが回復していく様子をモニタリングするために,以下の調査をおこなった.(1)柵の内部に野生動物が侵入していないかを確認するため,柵の内外にそれぞれ 3~4台の自動撮影装置を設置し,野生動物の撮影回数をカウントした.(2)野生動物によるミズバショウの採食の時期と程度を明らかにするため,柵内外の計 12か所に設置した 1m× 3mの固定調査プロット内の全ミズバショウ株について生育状況を調査した.調査は(1),(2)ともに 2011年から 2013年にかけて実施した.
 調査の結果, 2011年および 2012年ともに,柵の設置後は柵内への野生動物の侵入がほとんどなかったことが確認された.またミズバショウ株は,地下部の根茎が野生動物の掘り返し被害を受けると消失してしまうが,地上部が採食を受けても地下部が残っていれば翌年開花・展葉することが明らかとなった.ミズバショウの株数は,柵内のプロットでは増加し,柵外のプロットでは減少した.これらの結果から,山中峠湿原では今後も柵を用いた防除を継続していくことで,衰退したミズバショウが回復していくと考えられる.
著者関連情報
© 2013 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top