抄録
クロキツネザル(Eulemur macaco)はマダガスカル島のみに生息する昼夜行性の曲鼻猿類である.彼らはオスが漆黒,メスが褐色の毛色という雌雄で大きく異なる毛色を呈することが知られている.しかしながら,彼らの毛色の性差が何に起因するものなのかについては解明されていない.本種と同じように雌雄で異なる毛色を呈するものに多種の鳥類があげられるが,彼ら鳥類のオスの鮮やかな羽色には性ホルモンが強く関わっていることが知られている.そこで本研究では,飼育下クロキツネザルを用いて,さまざまな性ステロイドホルモン動態を調べることにより,本種の毛色と性ホルモンとの関係性を明らかにすることを目的とした.研究対象には成獣オス,成獣メスおよび去勢により体色が漆黒から褐色に変化した成獣オスの 3つのパターンの毛色の個体を用いた.性ホルモン測定のためのサンプルとして対象個体の糞を採取し,糞中に含まれるエストロゲン,プロゲステロン,テストステロン等の性ステロイドホルモン代謝産物動態を酵素免疫測定法にて調べ,毛色と性ホルモン動態の関係性を考察したので報告する.