抄録
日本哺乳類学会クマ保護管理検討作業部会では,クマ類の特定鳥獣保護管理計画,特定計画以外の任意計画,計画によらず実施されている事業やモニタリング等に関して,2007年に全国アンケート調査を実施,結果をまとめた事例集を作成した.今回,2回目の事例集作成のため,行政のクマ類保護管理担当者対象のアンケート調査を行った.2007年度の特定計画策定数は 11府県に対し,2012年度では 21府県.進んだようにみえる保護管理の取組みであるが,前回からの課題はクリアできたのか,新たに発生した課題は何か?
科学的な保護管理を進めるには,個体群と被害・生息地の状況をモニタリングし,その結果から計画を修正するフィードバックが重要である.ここでの研究者の役割は,科学的データや効果的なモニタリング技術の提供等であり,今回のアンケートでも行政担当者から学会,専門家への要望として多く挙げられていた.様々な地域の現状や課題を理解し,その解決策について幅広い知識を持っていれば,より適切にそれらの期待に応えられる.しかし,果たして私たち,特に若手研究者は幅広い十分な知識を持ち合わせているだろうか?
本集会では全国アンケートの結果を元に,まずは各地の現状,課題を整理して知識を共有した上で,保護管理を次のステップに進めるための研究者の役割,研究上の課題について,今一度,議論を深めたい.学生や若手の参加もお待ちしている.
1.道府県アンケート結果の概要~2007年と2012年の比較~
小坂井千夏(神奈川県立生命の星・地球博物館,学振特別研究員):クマ類の生息状況,それをとりまく社会的状況は日本国内でも地域により異なる.まずは,地域の特徴に沿って保護管理全般の取組みの変化や課題の概要を整理する.
2.個体数管理の様々な考え方
近藤麻実(北海道立総合研究機構):個体数管理の方法や目標も地域の状況により様々である.どのような地域がどのような管理目標を掲げているのか,課題は何かを整理する.また,課題の解決策を模索し,各地における保護管理の新たな一歩につなげたい.
3.被害・生息地管理のカギはどこにある?
後藤優介(立山カルデラ砂防博物館):近年,人身,農業被害等の軋轢が増加傾向にある.個体群を安定的に維持しながら被害を低減させるためには個体数管理と併せて被害・生息地管理が必要不可欠である.各地で様々な方法が模索されるなか,参考となる情報の不足,関係機関の連携の希薄さ,科学的モニタリングや効果測定の困難性などの課題があげられた.現状を整理することで管理を前進させるポイントを探したい.
4.まとめと展望~次のステップへ~
中村幸子(兵庫県立大学,学振特別研究員):各地の状況を踏まえて保護管理全般の成功例や新たな取り組みを紹介し,日本全体で保護管理を次のステップに進めるための鍵,そのための研究者の役割について提案,議論したい.
5.コメント,総合討論