霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: A1-3
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口頭発表
ニホンザルにおける上殿動脈と仙骨神経叢の位置関係
*姉帯 飛高*時田 幸之輔*小島 龍平
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抄録

 上殿動脈(Gs)の変異については諸家の報告があるが,仙骨神経叢との関係に留意した調査は渉猟した限りない.
 京都大学霊長類研究所共同利用研究のニホンザル 5体 10側において,Gsが仙骨神経叢を貫く位置と,大腿神経(F),閉鎖神経(O),腰仙骨神経幹(Tr)の 3枝に分岐する分岐神経(Nf;仙骨神経叢の上界を示す)の起始分節の関係を調査した.
 ニホンザルの Gsの貫通位置は L7/L7間,S1/S1間の 2通りが観察された.
1)L7/L7間(2側):Nfの起始分節はL5(2側)であった.F,O,Trの 3枝の相対的な太さの関係はTr>F>Oで L5の仙骨神経叢への参加が多い例(1側),F>Tr>Oで仙骨神経叢への参加が中等度の例(1側)があった.後者は前者よりも仙骨神経叢構成分節が低い.
2)S1/S1間(8側):Nfの起始分節はL5(2側),L5+L6(2側),L6(4側)であった.L5の例では 3枝の太さが,F>O>Trで L5の仙骨神経叢への参加が少なく,仙骨神経叢構成分節は1)の例よりも低い(2側).L5+L6の例では,L5の 3枝の太さは F>O>Trであり,さらに L6が Oに参加する(2側).L6の例では L5は仙骨神経叢へ参加せず,L6が F, O, Trの 3枝を分岐する(4側.これらの仙骨神経叢構成分節はさらに低い.
 以上より仙骨神経叢構成分節が高いと Gsの貫通位置も高く(L7/L7),仙骨神経叢構成分節が低いと Gsの貫通位置も低い(S1/S1).よって,仙骨神経叢構成分節の尾側へのズレに伴い Gsの貫通位置も尾側へズレる可能性が示唆された.
 我々はヒトの Gsと仙骨神経叢の位置関係についても調査しており(2012),同様の可能性を示唆している.よって,ヒトとニホンザルの Gsと仙骨神経叢は,共通した形態形成を辿る可能性が示唆された. 本研究は京都大学霊長類研究所共同利用研究によって実施され.

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© 2013 日本霊長類学会
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