抄録
チンパンジーやボノボでは、離合集散といって、集団のメンバーがパーティとよばれるサブグループに分かれて遊動している。集団の遊動域をどのように個々の個体が利用するかについては、“male-only community model”, “male-bonded community model”, and “bi-sexually bonded community model”(Wrangham, 1979)といったモデルがあるが、これまでの研究では、1)ヒガシチンパンジーでは、”male-bonded model”のように、オスは集団の遊動域を使い、メスは集団の遊動域の内側に小さな個々の遊動域を使う、2)ニシチンパンジーやボノボでは、オスもメスも集団の遊動域全体を使うと考えられてきた。また、チンパンジーでは、集合性に性差がみられ、メスは非社交的であるといわれてきた。本研究では、ウガンダ共和国カリンズ森林のヒガシチンパンジーとコンゴ民主共和国のワンバを対象に、オスとメスの遊動域の利用と集合性について分析を行った。その結果、ワンバのボノボでは、これまでいわれてきたように、オスもメスも集団の遊動域全体を使っていた。また、集合性の分析では、第1位のオスがオトナのメスとクラスターをつくっており、オトナのオス間には特別なつながりがみられなかった。
一方ヒガシチンパンジーは、ニシチンパンジーやボノボと同じように、オスもメスも集団の遊動域全体を使っていた。集合性の分析では、これまでのヒガシチンパンジーの結果と同じように、オトナのメスの間のつながりはオスに比べて強くなかった。これらの結果から、チンパンジーの遊動域利用や集合性の性差の地域による違いは、これまでいわれてきたような亜種の違いからは説明できないことがわかった。