霊長類研究 Supplement
第30回日本霊長類学会大会
セッションID: A14
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口頭発表
野生ニホンザルで起きた家系レベルの優劣関係の逆転
*風張 喜子*井上 英治*杉浦 陽子*井上-村山 美穂
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抄録
ニホンザルのオトナメス間には直線的な優劣関係が存在し、基本的には長期にわたって変化しない。子は母親の優劣関係を引き継ぐので、母系血縁集団(家系)間にも直線的な優劣関係が見られる。この家系レベルでの優劣関係も、基本的には安定であり、野生ニホンザルにおける家系レベルの優劣関係の逆転の報告は少ない。本発表では、宮城県金華山島のB1群で起こった家系レベルの優劣関係の逆転を報告する。群れには、互いに親子関係のない個体を祖とする6つの家系が存在する。優劣逆転は2003年12月から2004年1月の間に起こったと推定された。2003年秋以前と2004年春以降で、家系の異なるオトナメス間の敵対的交渉時の優劣関係を比較すると、2003年まで上位だった3つの家系が第4位だった家系の間で優劣関係が逆転していた。これまでの野生下での報告では、群れが上位家系と下位家系のグループに分裂する過程で、分裂群間の優劣関係が逆転しているが、今回は群れの分裂は起こらなかった。群れの分裂のようにメスどうしの関係を劇的に変化させる社会的要因がなくとも、家系レベルでの優劣関係の変動は起こりうることが示された。実験下での家系レベルの優劣逆転において、連携相手の数が影響したとの報告がある。本研究では、家系の異なるメスやコドモとの敵対的交渉時にサポートを行うのは同一家系の個体に限られること、家系の構成員が多いほどサポートの頻度が高いことを確認している。優劣逆転された3つの家系では2003年以前から徐々にメンバーが減少し、2003年冬の時点で各家系1~2個体しかいなかった。一方、優位になった家系は常に5個体以上で構成されていた。今回の家系レベルの優劣逆転の社会的要因の1つは、劣位になった家系の縮小(連携相手の減少)であると考えられる。
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© 2014 日本霊長類学会
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