霊長類研究 Supplement
第30回日本霊長類学会大会
セッションID: A15
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口頭発表
金華山の野生ニホンザルのコドモが形成する社会的ネットワーク
*島田 将喜
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抄録

野生チンパンジーは社会的遊びを通じて、集団全体を含む長期的に安定した遊びネットワークを形成し、幼年個体は積極的に遊びに参与することで遊びネットワークにおいて中心的にふるまい、他個体との紐帯を強めると示唆されている(Shimada & Sueur 2014)。本研究は、野生ニホンザルの幼年個体の、遊び・近接・血縁ネットワークの特徴とそれら相互の関係を明らかにし、遊びネットワークの機能を考察することを目的とする。
野生ニホンザル金華山A群の全幼年個体を対象とし、2007年9月5日~10月2日までの22観察日、計158.0時間の観察を行った。1歳~4歳の全個体11頭を対象に、1頭当たり10.5±0.3時間の個体追跡法による観察を行った。1分間隔の瞬間サンプリング法をもちいて各個体の社会的遊びの頻度を算出し、社会的遊びに参与したコドモを記録した。1分を1ユニットとするワンゼロサンプリング法をもちいて、追跡個体の3m以内に近接した個体を記録した。
よく遊ぶダイアドは、遊び以外でもよく近接した。また血縁関係が強いほど、遊び以外でよく近接した。頻繁に遊ぶ個体の遊びネットワークにおける中心性は、遊ばない個体に比べて有意に高かった。一方、コドモ個体間では、近接・遊びネットワークにおける個体間の「つながり方」は、異なっているとは言えなかった。
遊びと血縁の双方が、コドモの近接個体関係に影響を与えていた。一方、遊びの頻度は、成長に伴い減少するため、年少のコドモが、ネットワークの中心となるが、遊びと遊び以外の「コドモ社会」は類似した構造をもつ。このことは、ニホンザルは生後間もなく血縁・遊びネットワークに取り込まれ、コドモ期を通じて遊ぶこと、すなわち「コドモ社会」を経験することで、ワカモノ期以降の親和的関係の形成に寄与することを示唆する。
本研究はH18年度共同利用研究費・H25年度科研費(若手B)(代表島田将喜)・H25年度科研費(挑戦的萌芽)(代表竹ノ下祐二)の助成を受けて行われた。

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© 2014 日本霊長類学会
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