霊長類研究 Supplement
第30回日本霊長類学会大会
セッションID: P18
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ポスター発表
ネパールのアカゲザルから分離した腸管寄生アメーバEntamoeba nuttalliにおける遺伝子多型の解析
*橘 裕司*馮萌*小見山 智義*柳 哲雄*SHERCHAND Jeevan B.
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抄録
サル類におけるアメーバ感染の実態を明らかにすることは、人獣共通感染症対策の見地からも重要である。最近我々は、ネパールのアカゲザルの糞便から、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)とは異なる病原アメーバ株(P19-061405)を分離し、このアメーバに対してEntamoeba nuttalliという学名の復活を提唱している。今回、ネパールのアカゲザルにおけるE. nuttalli感染の実態と分離株の遺伝子型について解析を行った。ネパールのカトマンズ盆地において、P19-061405株が分離された場所を含めた4カ所でアカゲザルの糞便計112検体を集め、PCR法によって各種アメーバの陽性率を調べた。E. nuttalliは51%の検体から検出されたが、赤痢アメーバは全く検出されなかった。また、これらの糞便検体から14株のE. nuttalliを新たに分離培養した。そして、P19-061405株を含めた15株について、遺伝子型を比較した。18S rDNAでは、2株においてP19-061405株と1塩基異なっていたが、他株はすべてP19-061405株と同一であった。セリンリッチ蛋白質遺伝子では、異なる場所で分離された株は、それぞれ異なる遺伝子型を示した。tRNA関連繰返し配列については6カ所の座位を比較したところ、N-K2, R-R, S-Dでは2タイプ、S-Qでは3タイプ、D-Aでは5タイプが存在した。A-Lでは、1種類の主要なタイプの他に10タイプが見つかり、15株中の8株においては、2~6種類の複数のタイプが認められた。これらの遺伝子型の組み合わせによって、15株は9タイプの遺伝子型に分類できた。また、E. nuttalliにおけるtRNA関連繰返し配列の遺伝子型は、赤痢アメーバや他の近縁アメーバ種のそれとは全く異なっていた。E. nuttalliの遺伝子多型は、宿主のアカゲザルの地理的分布の違いをよく反映していることが明らかになった。
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© 2014 日本霊長類学会
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