霊長類研究 Supplement
第30回日本霊長類学会大会
セッションID: P17
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ポスター発表
真皮血管動態は近縁マカクに見られる性皮紅潮の種差に寄与する
*小野 英理*鈴木 樹理*石田 貴文
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抄録
旧世界ザルのいくつかの種では臀部性皮の腫脹と紅潮が観察され、こうした特徴的な性皮の変化は繁殖行動に関連している。マカクは広範囲に適応的分散をしておりまた多様な性皮の性状を呈するため、性皮の進化的考察に適していると考えられる。ニホンザル(Macaca fuscata)とアカゲザル(Macaca mulatta)は先行研究において同様の性皮変化を示すとされてきたが、我々が測色計を用いて性皮色を測定しCIELAB色空間に展開したところ、ニホンザルの性皮はアカゲザルに比べて暗く赤いことが判った(第29回大会発表)。今回、我々はこの紅潮の種差に寄与する組織学的背景を調べた。京都大学霊長類研究所保有のニホンザル15頭とアカゲザル15頭を対象とし、非繁殖期(2011年7月、2012年8月)と繁殖期(2011年10月、2012年11月)に性皮の測色と生検をおこなった。得られた組織から切片を作製しHE染色した。血管動態のパラメータとして血管数に加えそれらの面積を画像解析によって算出し、色値との相関を調べた(ピアソンの相関係数、5%有意水準)。その結果、ニホンザルにおいて血管数と色値の間に相関が見られた(L*、a*、b*、すべてP<0.05)。一方、アカゲザルでは血管数ではなく、血管面積に色値との相関が見られた(L*、a*はP<0.05、b*はP<0.01)。従って、これら血管動態パラメータの生物学的意味から、性皮紅潮の主要因はニホンザルでは血管新生であり、アカゲザルでは血管拡張であることが示唆された。先行研究では同様の性皮変化を示すとされてきたこれら近縁マカク2種について、我々の一連の研究は、紅潮の客観的種差を示し、さらに性皮の血管動態にも質的差異が存在し、紅潮パタンの組織学的背景が異なることを見出した。
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© 2014 日本霊長類学会
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