抄録
市民に霊長類について学ぶ機会を提供することは,霊長類研究に携わる者の務めであろう。特に子供たちへの働きかけは,将来の進路選択に関わる可能性もあり,重要である。日本モンキーセンターでは,博物館活動の一環として,小学校,中学校,高等学校等と連携した教育普及活動に取り組んできた。文部科学省の定める学習指導要領には,霊長類学に直接関わる項目がほとんど存在しない。それゆえ,学校教育における霊長類についての学びは発展的内容となるが,現在の学校現場は忙しく,発展学習にかけられる余裕は少ない。そこで,学校において子供たちに霊長類について学んでもらうためには,学習指導要領や教科書を研究し,学校カリキュラムに沿った学習プログラムを提案する必要がある。
教材開発も重要である。生きた動物や本物の標本は,子供たちの心に強い印象を与える。日本モンキーセンターには約70種の生きた霊長類がおり,4,000点を超える骨格標本を始めとする世界有数の標本コレクションがある。これらの活用次第で学びの質が変わってくるが,生きた霊長類を学校へ連れて行くことは不可能だし,動物園で飼育されている動物では,必ずしも野生の生態が観察できるとは限らない。また,学術資料として保存されている標本を,子供たちの手で破損させるわけにいかない。
様々な制約がある中,博学連携への意識が高い教員たちとの連携のもと,学習プログラムの在り方を模索してきた結果,小学校高学年の理科,中学校理科,高校生向け,大学との連携などにおいて定番となるプログラムが生まれ,連携相手ごとにアレンジを加えながら数多くの実践を重ねてきている。本発表では,開発してきた博学連携プログラムと,その波及効果について検討する。