抄録
ブナ科樹木の種子は繊維質が少なく、多くの森林性の動物により利用される。ニホンザルの生息地である幸島には、4種(マテバシイ、スダジイ、アラカシ、ウラジロガシ)が生育しており、その種子はサルの重要な食物品目のひとつとなっている。一方で、うち2種(アラカシ、ウラジロガシ)の種子には、被食防御物質であるタンニンが多く含まれ、採食時の強い負の効果や忌避効果が報告されている。そこで本研究では、各樹種の種子のタンニン含有率とサルの採食圧の関係について明らかにし、樹木の更新への影響について考察する。
2012~2014年の秋に採取したカシ2種の種子のタンニン含有率をModified Price-Butler法により測定した。なお、シイ2種についてはタンニンを含まないため、測定を行っていない。種子の採食圧の指標として消失率を算出するために、各樹種2個体の樹冠下に1m四方のコドラートを4か所ずつ設置した。得られた健全種子数の合計を生産量、落果翌年2月までに消失した種子を消失種子とした。また、対象木の15m円内の実生調査を行い、樹木の更新の指標として実生数をカウントした。
アラカシ・ウラジロガシ種子のタンニン含有率、生産量、消失率、実生数はそれぞれ8.1±3.1、8.8±4.5%、24.6±6.7、40.0±13.0個/m2、53.1~90.3%、43.5~89.5%、4.0±0、3.5±0.7個体であった。一方、シイ2種では、健全種子・実生は得られなかった。シイは、種子が未成熟な時期にサルによって食べつくされたため、健全種子も実生も得られなかった一方、カシでは種子の成熟・落果後、時間をかけて被食され、実生も確認された。以上より、シイ・カシ種子に含まれるタンニン含有率がサルの採食圧を介し、樹木の更新の維持に寄与している可能性が示唆された。