抄録
高速シーケンサーの技術革新により、「ヒトとは何か?ヒトはどこから来たのか?」という命題に対してゲノム生物学からのアプローチが可能になりつつある。この命題に取り組む方法のひとつとして、ゲノム科学と脳科学の融合領域である認知ゲノム科学的アプローチがある。認知ゲノム科学は、ゲノムを構成要素とするトランスクリプトーム、メチローム、メタボローム、プロテオームがいかに脳神経系の構造や機能と結びつくかを解き明かすことを目標とする。また、個体としてのヒトがそうであるのと同様に、ヒトの脳神経系も進化の産物である以上、その動作原理は進化的な制約下にあり、よって、進化的な視点で上記の命題に取り組むことが極めて重要になってくる。本研究では、ヒトと類人猿(合計14個体)の死後脳の8領域における比較トランスクリプトーム解析を行い、霊長類の進化の過程で獲得されたヒト時空間的遺伝子発現の特殊性に関する考察を行った。