霊長類研究 Supplement
第31回日本霊長類学会大会
セッションID: P1
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ポスター発表
カメラトラップを用いたマンドリルの繁殖季節性とオスの集団流入パターンの解明
本郷 峻中島 啓裕アコモ-オクエ エチエンヌ-フランソワミンドンガ-ンゲレ フレッド-ロイック
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抄録
霊長類の環境適応を考えるうえで,繁殖の季節性は重要なテーマである。本研究では,アフリカ熱帯雨林に生息するマンドリルMandrillus sphinxについて,出産・発情の季節性とオスの集団への流入パターンの変化を明らかにすることを目的とした。マンドリルではこれまで,放飼場群で繁殖の季節性が,野生群で発情に伴う多くのオスの流入が報告されているが,季節性とフェノロジーとの関連や,流入パターンの年齢差については詳細に研究されていない。2012年1月から2014年2月までの26ヶ月間,ガボン・ムカラバ国立公園の約400 km2の調査域に,20本のトランセクト(各1-2km)を設定し,その近傍にカメラトラップを5-10台ずつ(合計約100台)設置した。撮影されたマンドリルの動画について,集団・ヒトリオス・オスグループ・その他に分類し,カメラから5m以内に映ったすべての個体の性年齢クラスとメスの繁殖状態(性皮腫脹および新生児の有無)を識別した。新生児を抱いたメスのほとんどは結実量のピークにあたる毎年11-2月に撮影され,一方で,性皮腫脹した発情メスの多くは,果実が欠乏する3-9月に撮影された。集団に占めるオスの割合はメスの発情率に合わせて増減したが,オトナオスの方が,ワカモノオスに比べて増減の程度が大きかった。また,ワカモノオス割合は発情率低下につれて低下したのに対し,オトナオスでは発情率低下後もしばらく増加を続けた。さらに集団内でのオスの位置取りを調べると,オトナオスは発情メスといっしょに映ることが多かったが,ワカモノオスではそのような傾向はなかった。マンドリルの繁殖は結実フェノロジーに対応した季節性を示し,資源量のピークに出産期を合わせていると示唆された。また,多くのオスはメスの発情に合わせて集団に季節的に流入すると考えられるが,ワカモノオスに比べオトナオスの方が発情メスに優先的に接近でき,交尾機会を多く得ている可能性がある。
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© 2015 日本霊長類学会
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