薬剤疫学
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活動報告
⌈日本における傷病名を中心とするレセプト情報から得られる指標のバリデーションに関するタスクフォース⌋ 報告書
岩上 将夫青木 事成赤沢 学石黒 智恵子今井 志乃ぶ大場 延浩草間 真紀子小出 大介後藤 温小林 典弘佐藤 泉美中根 早百合宮崎 真久保田 潔
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2018 年 23 巻 2 号 p. 95-123

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抄録

目的:バリデーション研究は,医療情報データベース (DB) を用いる研究・製造販売後調査の信頼性を高めるために必要となることがある.日本薬剤疫学会はタスクフォースを設置し,日本でのバリデーション研究の在り方を検討した.

方法:教科書やガイドラインの記載,国内外のバリデーション研究の (1) DB の種類, (2) セッティング,(3) アウトカム定義,(4) リンケージ,(5) ゴールドスタンダード,(6) サンプリング方法・サイズ,(7) 妥当性の指標,(8) 指標の閾値・利用法を検討した.

結果:Strom 編の教科書第 5 版 41 章に記載が見られたが,バリデーション研究自体に関するガイドラインはなかった.検討した研究では (1) 多様なDBが,(2) “populationbased” ,または少数の医療機関で,(3) ICD コード単独の,または薬・検査などと組み合わせたアウトカム定義で,(4) リンケージを通常利用し,(5) カルテレビュー,疾患登録などをゴールドスタンダードとして,(6) 様々な (ゴールドスタンダードに強く依存する) サンプル方法,サンプルサイズで,(7) 感度,特異度,陽性的中度,陰性的中度の全て,または陽性的中度のみを評価していたが,(8) 指標の閾値を示したものは稀であった.

研究実施の手順では,リサーチクエスチョンの明確化がまず重要である.日本では,病院単位で実施することが当面多く,対象集団の特徴の明確化,サブグループごとの指標値の報告,偽陽性・偽陰性例の特徴づけが推奨される.アウトカム定義は複数評価すべきである.カルテレビューによる研究では,ランダムサンプル全例,アウトカム定義 Yes/No で異なる割合で抽出したサンプル, “all possible cases” のレビューが選択可能である.指標の閾値の絶対的基準の設定は難しい.

考察・結論 : バリデーション研究はデータベース研究の質を大きく高めうる.今後,バリデーション研究の環境の向上を,国民的理解の下に実現すべきである.

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© 2018 日本薬剤疫学会
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