霊長類研究 Supplement
第31回日本霊長類学会大会
セッションID: P15
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ポスター発表
飼育下ボルネオオランウータンの妊娠中のホルモン動態
平井 仁智井上 健二小川 誠一成田 浩光清水 慶子
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抄録
一般的に,妊娠するとホルモンは非妊娠時に比べ劇的に変動する.ヒトでは,妊娠経過とともにエストロゲン,プロゲステロン,DHEASや絨毛性ゴナドトロピン(CG)といったホルモンは増加し,特に胎盤からのみ分泌されるCGは妊娠診断に利用されている.オランウータンにおいてもエストロゲン,プロゲステロンおよびCGはよく研究されているものの, DHEASの動態は不明である.また,高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を利用した先行研究では,オランウータンの妊娠後期のエストロゲンの主成分はエストリオールといわれているが,その動態については不明である.そこで,本研究では,妊娠中の雌1個体の尿中E1C,PdG,E3G,DHEASおよびCGを測定し,オランウータンの妊娠中のホルモン動態の基礎データとすることを目的として考察をおこなった.
尿サンプルは,釧路市動物園で飼育されている雌オランウータン(ロリー,1979.6.21生)から採取をおこなった.本個体は,2010年3月1日と2014年1月15日に分娩し,今回はこの2度の妊娠時の尿から測定をおこなった.なお,2010年に分娩した際のサンプルは妊娠後期,2014年に分娩した際のサンプルは妊娠初期のものである.妊娠初期の結果では,全てのホルモンにおいて妊娠経過とともに上昇することがわかった.妊娠後期の結果では,E1C,PdGおよびE3Gは分娩まで上昇し続け,中でもE3Gは分娩1ヵ月前からさらに上昇することがわかった.一方で,DHEASおよびCGは一定の値を維持したままであった.分娩後,全てのホルモンは非妊娠時の値まで減少した.以上のことから,これらのホルモンは妊娠のモニタリングとして有効であり,特にE3Gの分娩前の急激な上昇はヒトでも観察されることからオランウータンでも分娩の予知に用いることができると考えられる.
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© 2015 日本霊長類学会
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