霊長類研究 Supplement
第34回日本霊長類学会大会
セッションID: P36
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ポスター発表
チンパンジーに「利き足」はあるか?
*中野 良彦
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抄録

ヒトの運動機能における左右差(laterality)の進化過程については,脳の系統発達と関連する可能性が高いとされ,その解明のためにチンパンジーをはじめとする類人猿や他の霊長類での研究が進められてきた。その結果,「利き手(handedness)」に関しては,フィールドでの観察研究,飼育下での実験研究の両者において,個体ごとに上肢の利用頻度の左右差が認められること,ヒトにおける右利きの優位性のような種全体としての傾向は見られないことなどが報告されている。しかし,こうした上肢の左右差についての研究が多数報告されているのに対して,下肢の利用における左右差,すなわち「利き足」に関する研究は見られていない。上肢におけるlateralityが,ヒトの進化において上肢機能が運動や身体支持から精密な操作へと変化する進化過程で生じたものであるならば,下肢におけるlateralityも類人猿でも生じている可能性が考えられる。ヒトでは,ボールを蹴ったり,鉄棒に引っかけたりといった素早く正確な動きをする「利き足」と体重の支持に作用する「軸足」が各個人で決まっているとされる。チンパンジーが行うナックル歩行の歩行姿勢は一般的な哺乳類の四足歩行とは異なり左右非対称である場合が多いが,こうしたことは「利き足」と関係しているのであろうか。こうした点について考察するため,林原類人猿研究センター(岡山県玉野市,2013年3月に閉鎖)においてチンパンジー垂直木登り運動を撮影したビデオ映像(成体オス2頭,成体メス2頭,それぞれ数年間にわたる約150試行)について分析した。分析項目として,最初にどちらの足で垂直の支持基体に接触するかを記録した。結果として,個体差はあるが,使用する下肢に左右差が存在する傾向が認められた。しかしながら,その結果が他の要因により生じたものである可能性もあり,さらに考察した結果について報告する。

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