霊長類研究 Supplement
第31回日本霊長類学会大会
セッションID: P47
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ポスター発表
霊長類Evo-Devo研究ツールとしてのチンパンジーiPS細胞の利用
北島 龍之介リン ザッカリー ユーチン馬場 庸平西原 浩司今井 啓雄平井 啓久岡野 栄之今村 公紀
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抄録
ヒトと系統学的に近い非ヒト霊長類は、疾患研究や進化研究の対象として極めて重要な存在である。しかし霊長類の研究利用は、希少性・倫理的問題・コスト面・取り扱いの難しさから他の実験動物に比してハードルが高い。特に類人猿に対しては、電気生理実験や遺伝子導入など、侵襲的実験は事実上不可能である。
こうした状況の一つの打開策としてiPS細胞技術の適用が考えられる。iPS細胞がもつ増殖能と多分化能は、細胞資源の供給・保存と、各種細胞の動態解析を可能にする。加えて、樹立時に採血などの軽度な侵襲的操作を伴う他、個体への負担は極めて小さい。我々はこれらiPS細胞技術を霊長類研究や種の保存に応用することを目的に、複数の霊長類種においてiPS細胞の作成とその分化誘導を行い、技術の標準化および簡易化に取り組んでいる。
我々はこれまでにチンパンジー新生児および成体の線維芽細胞にエピソーマルベクターを用いてヒト型の初期化因子を導入することでiPS細胞を樹立した。得られたiPS細胞は、マウスにおけるグラウンドステート条件で維持培養が可能であり、また、細胞継代時にはトリプシンによる酵素的細胞剥離と緩慢凍結法による簡便な細胞の保存が可能であるため、取り扱いが非常に容易である。一方、遺伝子導入法の簡易化としてリポフェクションによるiPS細胞作成にも取り組み、樹立に成功している。同条件はマーモセットにも適用でき、霊長類におけるiPS細胞樹立法のとして広く利用できることが示唆されている。併せて、霊長類研究所が保有するニホンザルの突然変異個体由来の線維芽細胞を用いてiPS細胞作成を試みており、今後も適用可能な霊長類種を増やしていく予定である。霊長類研究所が有する細胞資源と全国の動物園とのネットワークを最大限に活用するためにも、霊長類各種のiPS細胞を樹立し、他の研究機関に提供できる体制を構築したい。
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© 2015 日本霊長類学会
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