霊長類研究 Supplement
第32回日本霊長類学会大会
セッションID: A08
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口頭発表
野生ボノボのメスにおける連合形成パターン
徳山 奈帆子古市 剛史
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抄録

霊長類においてメスの連合攻撃行動は、母系かつ専制的な順位関係を持つ種に多くみられる。その形成パターンは血縁選択で説明され、血縁のあるメス同士で、順位や食物を巡る競争のために形成される。ボノボ(Pan paniscus)においてはメスが集団を移籍するため、基本的にメス同士の血縁関係はない。にもかかわらず、メスの頻繁な連合攻撃がみられる。近縁のチンパンジーにおいては、血縁関係にないオス同士も親和的関係や互恵的な支援関係に基づいて連合を形成することが知られている。この研究ではボノボのメスにおいて、連合が親和的関係や互恵性より形成されているか検討した。コンゴ民主共和国ルオー学術保護区に生息する野生ボノボPE群のオトナメス9頭を対象に観察を行った。攻撃的行動をすべて記録し、2頭以上が共同で同じ個体に攻撃した場合、連合攻撃とした。はっきりと観察できた場合のみ、どの個体がどの個体を支援したか記録した。5分間隔のスキャンサンプリング法により、視界内すべての個体の近接(3m以内)とグルーミングを親和的関係の指標として記録した。メスの連合攻撃はすべて、オスを攻撃対象として行われた。特に、オスがメスに対し攻撃的に振る舞った直後に行われることが多かった。グルーミングや近接の頻度と、そのペアが連合を形成する頻度との間に有意な相関はなかった。攻撃の支援は互恵的ではなく、年上のメスが年下のメスを支援するという一方向的な関係がみられた。ボノボのメスの連合は、互恵性や親和的関係に基づいて形成されているわけではないことが分かった。メス間の競争のためではなく、オスからのハラスメントへの対抗として年上の優位なメスが年下の劣位なメスを支援することで形成されていると考えられる。年上のメスは、年下のメスを支援することでメス間の凝集性を高め、息子の繁殖効率の上昇などの利益を得ているのかもしれない。

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© 2016 日本霊長類学会
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