霊長類研究 Supplement
第32回日本霊長類学会大会
セッションID: A07
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口頭発表
マンドリルにおける土地利用と凝集性の季節変化
本郷 峻中島 啓裕Etienne F. AKOMO-OKOUEFred L. MINDONGA-NGUELET
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抄録

多くの霊長類のような集団性の動物では、資源量など環境の周期的変動に各個体が対応することで、集団の行動にも可塑性が生じると考えられる。私たちは、数百個体の大集団を形成するマンドリル(Mandrillus sphinx)が、資源量が季節的に変動するアフリカ熱帯林の環境に対応してどのように食性・土地利用・凝集性のパターンを変化させるかを明らかにするため、2009-13年にかけてムカラバ国立公園(ガボン)において調査を行った。1)集団の食性を明らかにするため、採食行動を直接観察するとともに食痕と糞内容物の同定を行った。2)また、約500 km2の範囲での2年間のカメラトラップ調査で得られた動画データから、集団の相対土地利用頻度を地域ごと(全11地域)に算出した。3)さらに、凝集性の指標としてカメラトラップ動画あたりの被撮影個体数を計数した。1)糞分析の結果、マンドリルの食性は資源量の季節変化に対応して変化し、果実期には果実の体積割合が、非果実期には繊維質の体積割合が高くなっていた。2)集団のカメラ撮影頻度は年間を通じて特定の2地域で高く、さらに果実量が最も多い時期(果実期)においてはそれらの地域への集中度が有意に高くなっていた。一方で、非果実期には地域ごとの撮影頻度の差が小さくなっていた。さらに、2年間で地域ごとの撮影頻度の年次相関をとると、果実期においてのみ1年目と2年目の撮影頻度が有意な正相関を示した。3)採食中の個体の凝集性は非果実期に比べ果実期で有意に低下していた。これらの結果は、マンドリル集団が環境の季節変化に対し行動を変化させ、果実期には特定地域の集中利用と凝集性の低下によって果実の採食効率を上昇させる一方で、非果実期には広い範囲に利用を分散させて繊維質を採食することで果実資源の枯渇を補っていることを示唆している。多数の個体が集まることによって集団として広大な範囲の認知地図を保有し、土地利用パターンの大規模な季節変化を可能にしているのかもしれない。

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© 2016 日本霊長類学会
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