霊長類研究 Supplement
第32回日本霊長類学会大会
セッションID: P11
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ポスター発表
ニシローランドゴリラの単独オスにおける採食と遊動の季節的変化
坪川 桂子
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抄録

一般的に霊長類は、採食品目にしめる果実の割合が高いときには、分散した果実樹を探し求めて1日に長い距離を移動する。季節的な果実食性を示すニシローランドゴリラ(Gorilla gorilla gorilla)の群れにおいても同様な傾向が報告されてきた。本研究では、群内の採食競合が働かない単独オスにおいては、果実食が遊動に与える影響が群れとは異なるのではないかという予測のもと、単独オスの採食物の内容と採食場所の利用方法、および日遊動距離の関連を調べた。調査はガボン共和国ムカラバ・ドゥドゥ国立公園において、2011年9月から2012年10月にかけて断続的に実施した。ニシローランドゴリラの単独オス1個体を計50日間追跡して、約386時間の直接観察を行った。その結果、果実の採食時間割合が高い日には、1カ所の採食場所で長時間採食して1日に利用する採食場所の数は少なくなり、その一方、果実食割合が低い日には、果実以外の花などの採食場所も渡り歩くために1日に利用する採食場所が増加するという採食・遊動パターンを示すことが明らかとなった。また、1日10時間以上の直接観察とベッド位置の推定に成功した計15日間において日遊動距離を算出したところ、果実を多く採食する日には日遊動距離が短くなり、果実食割合の低い日には日遊動距離が長くなるという、ニシローランドゴリラの群れとは逆の傾向が見出された。これは、1カ所の採食場所での滞在時間や1日に利用する採食場所の数が、採食競合の働かない単独オスでは群れと異なるためであると考えられる。本研究の結果は、ヒガシローランドゴリラ(G. beringei graueri)の単独オスにおける先行研究とも一致しないのだが、これは両種の生息環境や果実食性の高さの違いを反映していると推定される。

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© 2016 日本霊長類学会
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