ニホンザルの奇形は四肢に集中して顕われ、餌付け群で多発し、1969-72年に出産の峰があった。高崎山群では、餌付け3年後の1955年に、ニホンザル最初の奇形個体が出生した(伊谷・水原、1955)。演者らは、2007年の日本霊長類学会23回大会において、1955-1977年の間に高崎山群で観察された四肢奇形個体の性、年齢、奇形箇所の形態を記載し、114頭はいたことを報告した。これは(1)1977年8月に行った、ニホンザル奇形問題研究会と高崎山自然動物園との合同調査で記載された四肢奇形67個体、(2)1962年、1965年、1971年の個体数調査時に作成された個体カードに記録された奇形箇所の形態を、各調査を運営された方々の御好意により利用させていただいたもの、(3)九州大学医学部解剖学教室と、京都大学理学部動物学教室自然人類学研究室に保存されていた高崎山群の死亡個体を、両教室の御好意でレントゲン写真撮影させていただいたもの、を、(5)既報(Iwamoto, 1967; Tanaka & Nigi, 1967)とつき合わせて重複を除いたものだった。今回これに加え、(6)1976年9月の山極寿一による調査を利用させていただき、(7)1978年および1979年に行われた高崎山群捕獲総合調査(和秀雄代表)で、濱田穣・和秀雄により撮影されたレントゲン写真とその所見を加え、検討した結果を報告する。ニホンザルの四肢奇形は暫定的に、次のように分類される(Yoshihiro et al, 1979; 和, 1982)。①短指(趾,B)②欠指(趾,O)③裂手・裂足(S)④単指(趾,U)⑤半肢(H)⑥欠肢(E)⑦合指(趾,Sy)⑧多指(趾,P)⑨屈指(趾,C)