霊長類研究 Supplement
第32回日本霊長類学会大会
セッションID: P44
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ポスター発表
ニホンザル(Macaca fuscata)における傾斜した樹上支持基体に対する後肢運動の調節
後藤 遼佑奥村 泉中野 良彦
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抄録

霊長類は傾斜した樹幹や樹枝等の傾いた支持基体の上を頻繁に移動する。こうしたロコモーションにおいては、霊長類は水平な支持基体上の移動とは異なる運動課題に対処しなければならない。特に傾斜した支持基体上のロコモーションにおいて問題となるのは、身体のピッチ回転を生じさせるtoppling momentである。上り傾斜時にはtoppling momentは後方へのピッチ回転モーメントとして作用し、下り傾斜では前方へのピッチ回転モーメントとして、支持基本体上でのバランス維持を困難にする。霊長類は上り傾斜時に生じる後方へのモーメントに対して手部の着く位置を変えて対処することが知られている一方(Nakano, 2002;Schmidt & Fischer, 2011; Hesse et al., 2015)、後肢の運動ついて詳細な分析は行われていない。本研究では、傾斜支持基体において生じるtoppling momentに対して霊長類が後肢の運動をどのように調節するのかを明らかにすることを目的とした。二頭のニホンザル(Macaca fuscata)を研究対象として、傾斜した支持基体上ロコモーション時の速度、ストライド長、ケイデンス、後肢関節角度を計測した。支持基体の傾斜角度は、水平な0°条件に加え、上り条件として傾斜角度15°から90°まで、下り条件として傾斜角度-15°から-60°まで、15°ごとに上り6条件と下り4条件を用いた。現在時点の分析から、-45°と-60°の下り条件において後肢関節角度が他の下り条件(-15°と-30°)と異なることが示唆された。本発表では、この結果に上り条件の分析を加え、toppling momentに対する後肢の運動調節について報告する。

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© 2016 日本霊長類学会
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