霊長類研究 Supplement
第33回日本霊長類学会大会
セッションID: A05
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口頭発表
シロテテナガザルの二足歩行と垂直木登りにおける体幹・下肢筋シナジーの比較
*後藤 遼佑中野 良彦
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抄録

ロコモーションでは複数の筋が定型的に活動する。ロコモーションにおいて同期的に活動する筋は,筋シナジーとしてまとめて制御されると考えられている。シロテテナガザル(Hylobates lar)はロコモーターレパートリーに二足歩行と木登りを含む。どちらのロコモーション様式も,下肢の着地,身体の支持,蹴り出し,振り出しの類似した定型的な運動が反復される点で似ている。本研究の目的は,シロテテナガザルが行う二足歩行と垂直木登りでは同じ筋シナジーが動員されているかどうかを明らかにすることであった。大阪大学大学院人間科学研究科で飼育する1個体のシロテテナガザルを使用した。3つの体幹筋,および15の下肢筋から,表面電極もしくはファインワイヤ電極を用いて二足歩行と垂直木登りにおける筋電を収録した。筋電はハイパスフィルタ(遮断周波数:50 Hz)で高周波ノイズを除去し,全波整流化した。その後,ローパスフィルタ(遮断周波数:20 Hz)を介して得られた低周波成分を分析に使用した。筋シナジーの同定のため,18チャンネルの筋電データに非負値行列因子分解を適用し,筋シナジーの活動の位相を示す5つの波形と,それぞれのシナジーとの関連の程度を表わす係数を各筋について算出した。シロテテナガザルの5つの筋シナジーの活動の位相とシナジーを構成する筋は二足歩行と垂直木登りの間で基本的に類似していた。しかしながら,立脚相後半に活動する筋シナジーには相違点が認められた。本発表において,筋シナジーの類似点と相違点について議論する。

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© 2017 日本霊長類学会
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