霊長類研究 Supplement
第33回日本霊長類学会大会
セッションID: P08
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ポスター発表
距骨cotylar fossaの形成位置と足根関節での機能:霊長類と非霊長類の差異
*江木 直子
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抄録

距骨のcotylar fossaは,距骨体の内側面から距骨頸にかけて形成される窪みで,幾つかの哺乳類分類群に見られる。霊長類でも存在するが,アフリカ獣類ではこの上目の数少ない共有派生形質の候補とされ,また有胎盤類外では有袋類のカンガルーにも存在する。本研究では,これら系統的に離れた分類群間でcotylar fossaの位置と形態の違いを比較し,各分類群で位置が足根関節の可動にどのように関係するかを検討した。cotylar fossaには脛骨遠位部の内側踝が接する。近位足根関節の主要関節面である距骨体と脛骨遠位面の一軸性の可動に対して,cotylar fossaの向きと位置を観察し,どのような姿勢で脛骨内側踝-距骨cotylar fossaの関節面が機能しているかを推定した。霊長類のcotylar fossaは距骨体の側面にあり,内側踝の正中に向いた面がここに接する。また,距骨体の幅が脛骨+腓骨遠位関節面の内幅より狭いため,隙間が存在して,通常の背底屈では内側面は接触しない。したがって,足根の背屈に加えて,外返しが起きた際に関節の保定に機能していると推察される。アフリカ獣類では深さや形状に変異はあるが,距骨頸の付け根にcotylar fossaがあり,脛骨内側踝の遠位方向に向く面がはまる。カンガルーのcotylar fossaは長細い形状であり,脛骨内側踝の前後に長い遠位面がはまる。いずれも,足根を背屈した際によく関節し,最背屈状態では関節面が噛み合ってしまうので,外返しや内返しは起きない。結論として,系統解析ではcotylar fossaの有無は同等の形質として扱われてきたが,霊長類と他の哺乳類分類群では形態的な差異が存在し,また異なる関節運動の機能適応に由来して生じた可能性が示唆された。

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© 2017 日本霊長類学会
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