霊長類研究 Supplement
第33回日本霊長類学会大会
セッションID: P18
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ポスター発表
東日本におけるニホンザル(Macaca fuscata)の寄生蠕虫相(概要)
*浅川 満彦羽山 伸一岡本 宗裕
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抄録

ニホンザル(Macaca fuscata)は,基幹作物である果樹への農業被害や家屋への侵入等,地域住民との軋轢が生じていることから,各地の保護管理計画などに基づき有害捕獲されている。そこで,演者らは捕獲個体を用い,特に,情報が極めて少なかった東日本における寄生蠕虫相の調査を実施し,青森県下北半島,福島県福島市および千葉県房総半島の結果が公表された(三觜ら,2017; 里吉ら,2004; 渡辺ら,2016)。本発表ではこれまでに判明した蠕虫相の概要を紹介し,他地域における先行研究の結果と比較をしつつ東日本における構成種の特色にいて論考した。また,この国内に外来種として定着したタイワンザル(Macaca cyclopis)および輸入検疫時に斃死したカニクイザルMacaca fascicularisから検出された蠕虫検査の結果も勘案しつつ(浅川・巖城,2011; 浅川ら,印刷中),ニホンザルにおける蠕虫相への国外産マカク属の人為的移入による影響についても言及した。興味深い特徴として,直接発育をする線虫類のTrichuris sp.とStrongyloides fuelleborniは上記3地域で検出されたこと,吸虫類Ogmocotyle ailuriが東北地方2県でのみ見出されたこと,しかし,間接発育をする線虫類のStreptopharagus pigmentatusが東京都大島で定着したタイワンザルで認められ,東北では見出されなかったこと,直接発育をする線虫類のOesophagostomum属腸結節虫と条虫類Bertiella studeriは福島産ニホンザルと輸入されたカニクイザルで認められたことなどが判った。これら蠕虫類の地理的分布と生活史との関連性(中間宿主動物の生息状況など)は必ずしも明確には出来なかったので,別要因も含め今後の検討課題が浮き彫りにされた。本研究の一部は平成24年度~28年度京都大学霊長類研究所共同利用・共同研究制度,文部科学省科研費および戦略的研究拠点形成支援事業の助成を受けて実施された。

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© 2017 日本霊長類学会
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